小説の書き方講座1

あいちゃ

2012年04月04日 21:54




処女作「未来からの調査員」を書いてから、はや4年半。
最新の「九階建てのマンション」が16作目になりました。
そこで、これまでにあたしが得た小説の書き方を
そろそろまとめてみようかなと思いまして、
すげー@@大それたタイトルで、恐縮しちゃいますが><、
書くときに気を付けていることをまとめてみまーす。

あたしの執筆の特徴と思っているのが、
文章の推敲に結構時間をつかっていることです。
(というか、楽しんでいるんですけどね)
今回の九階建てマンションを例にあげますと、
冒頭の文章が最初から、推敲を重ねて、
かなり変わっています。
まずは、それをご覧ください。


①最初に発表した冒頭文。
 新しいマンションを見つけると、おれはいつも何階建てなのかを数えている。十一、十二、十三階建てか……。クリスチャンではないから、十三という数字に特別な感情はない。おれが確認したかったのは、単に九でない、ということだ。
 九階建て……。
 あの一件以来、おれは九階建ての建物には入っていないし、今後も訪れるつもりはない。とにかく、九階建てのマンションだけは、もう二度とごめんなのだ。


さて、それを修正した文章がこれです。
②'12.4.4 時点での冒頭文。
 久しぶりに旧市街を抜けて下町の青空市場が立ち並ぶ入り組んだ狭い路地をぶらぶらと散歩していると、そこは以前の見覚えのある風景とは違っていた。突き当りにあるはずの茶色に錆びついた平たいプレハブ工場はなくなっていて、代わりに完成を間近に控えた新築のマンションが建設されていた。十一、一二、十三階建てか……。
 新しいマンションを見つけると、いつも条件反射的におれは何階建てなのかを数えてしまう。別にクリスチャンではないから、十三という数字に特別な感情があるわけではない。階数を数えたかった理由は、単に九階建てでないことを確かめるためだ。
 九階建て……。
 あの一件以来、おれは九階建てのマンションには入ったことがないし、今後も訪れるつもりはない。なぜかって? それは単純に怖いからだ! そう、大の男がなさけないと笑いたい奴は、大いに笑うがいい。ただ、これから語るおれの話をまずは黙って聞いてもらいたい。笑うのはそれからでも遅くなかろう。


短編小説での冒頭文は、その小説の命です!
読みたいという気持ちを読み手に起こさなければなりません。
①では、いきなり主張したいことを書き込みました。
それもありですが、もう少し遊びを入れてみましょう。
ということで②の出だしですが、
情景を丁寧に描写して、そのあとで主題に入る。
という方法を取りました。
「そこは以前の見覚えのある風景とは違っていた。」は
お気に入りの文章で、
「違っていた」は始めは「異なっていた」でした。
でも、「異なる」は通常の文章で用いる表現で、
「違う」は会話文で用いる表現です。
一人称の描写ですから、会話文をいれることで、
リアリティのインパクトをより高められるという理由で
「違う」を採用しました。
以前の見覚えのある風景とは違っていた、とは
論理的ではなくぎこちない表現です。
「そこは見覚えのある風景ではなかった」
が表現したいことをつたえる自然な文章です。
これをぎこちなく、リズムよく、文章にする所が
あたし流の小説の文章推敲の目的でもあります。
書いてから文章を読み直した時に、
リズムよく読めればOKで、
逆にどんなに気に入った表現でも、
読むリズムが悪くなれば、却下します。

現在形の「する」と、過去系の「した」は
あたしはリズムを考えて使い分けます
人によっては、すべて「した」にして
書かれる場合もありますが、あたしは混ぜる派です。
この点については、その人の趣味でいいと思います。

それから、迷ったら文章は増やす方がいいと思います。
②の最期の「なぜかって?」から
「笑うのはそれからでも遅くなかろう。」までの文は、
①をみてもらえばお分かりのように、
必要のない文章です。
でも、入れることで、
読者はゆったりと小説に入っていくことができます。
①の文章は、無駄がなくても、慌ただしいんですよね。

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